2006年4月21日

日本と韓国の間で竹島(独島)の海洋調査をめぐって、緊迫した空気が流れています。日本側が次官を韓国に派遣したので、拿捕などの事態は避けられるでしょうが、一時は緊張が高まりました。こうした島の領有権問題や、教科書問題、靖国問題などで日本と中国・韓国の間で激しい応酬が行われているのを見ると、ヨーロッパとは対照的にアジアにはまだ安定がないということを強く感じます。もちろんヨーロッパも60年以上前は、同じようにドイツとフランス、ドイツとポーランドの間で似たように緊迫した空気が流れることがあったのですが、第二次世界大戦の悲惨な体験から、国家主権の一部をあきらめても、国際機関を通じて融和し、運命共同体となることを、ヨーロッパの国々は決めたのです。ロバート・ケーガンが欧州をパラダイスにたとえているように、EUを核とした政治的、経済的統合はこの地域に大きな安定をもたらしました。少なくとも、首相の特定の宗教施設訪問をめぐって、外交関係が悪化するという事態は起きていません。西ヨーロッパ諸国と中欧、東欧諸国は、ポスト・ナショナリズムの時代に入りつつあるのです。アジアとヨーロッパを単純に比べることは禁物ですが、アジア諸国はヨーロッパに比べて、妙なナショナリズムによって、余計なコストや神経を使っていると思われませんか?販売部数を増やすためでしょうか、好戦的な見出しでナショナリズムを煽り立てる日本の一部の商業雑誌、また国民に愛国精神を植え付けようと試み、日本の軍国主義とやらを未だに強調する、中国の文部当局の責任も、私は大きいと思います。